令和6年度 夏季学術講習会
2024年7月21日、郡山市のビッグアイ市民交流プラザ大会議室にて令和6年度夏季学術講習会が開催されました。
講演1では「診療を愉しむ 攻める問診」と題し、福島県立医科大学会津医療センター総合内科学講座特任教授、諏訪中央病院総合診療科非常勤医師、同病院内科顧問の山中克郎先生にご講演いただきました。
山中先生は、会津医療センターでの鈴木先生や津田先生、名古屋勤務時代に寺澤先生との交流を通じて鍼灸に関心を持っておられます。
総合診療医としての長年の地域医療経験から、患者との共感や信頼関係の構築が診療において重要であると述べ、患者のバックグラウンドを理解することの重要性を強調されました。また、問診の重要性についても触れ、問診が診断の8割を占めるとし、突然発症する症状の危険性や患者の話をじっくり聞くことの重要性を説明されました。
さらに、ビタミン欠乏症の診断についても触れ、特にビタミンB1やB12の欠乏が認知症や運動失調につながる可能性があることを解説されました。患者とのふれあいや訪問診療の経験を共有し、日常的な交流が診療の質を高めることを強調されました。
今後の医療におけるAI技術の導入が予想される中でも、人間的なふれあいの価値は依然として重要であると述べ、最後に人生の最期に向けたACP(人生会議)の重要性についても触れ、オーストラリアでの実例を紹介しつつ、日本における高齢者医療のあり方を考察されました。
山中先生の優しい語り口と体全体を使った説明で会場内が明るく、最後は感動で涙をこらえる様子も見られ、エンパワーメントを体感する講義でした。
講演2では「緩和ケアと鍼灸」と題し、福島県立医科大学会津医療センター附属研究所漢方医学研究室助手の加用拓己先生にご講演いただきました。
加用先生は、緩和医療における鍼灸の役割とその科学的根拠を解説し、具体的な症例を通じてその効果を示すことを目的とされました。日本ではがん患者に対する緩和ケアの提供が多いことを説明し、鍼灸の有効性と安全性に関するエビデンスを提供されました。
また、鍼灸がどのように患者の痛みやその他の症状を軽減したかを施術例の動画を交えて説明されました。多職種協働の重要性を強調し、医師、看護師、鍼灸師などが連携することの重要性を述べました。鍼灸師が緩和ケアチームの一員としてどのように貢献できるか、将来の展望についても触れられました。
講演後には参加者からの質問が活発に行われ、緩和ケアにおける鍼灸の具体的な応用方法や臨床での挑戦についての議論が行われました。
講演3では「使わなきゃ損!?リニューアルした『日本鍼灸師会Eラーニング制度(NELS)』について」と題し、三村聡先生にご講演いただきました。
NELSは日本鍼灸師会が提供するオンライン学習プラットフォームで、最近リニューアルされました。リニューアルにより、アクセスが容易になり、より多くの鍼灸師が利用できるようになった点が強調されました。
学習管理システムにより、個々の学習進捗を追跡し、カスタマイズされた学習計画を立てることが可能です。NELSを利用することで、鍼灸師は資格維持に必要な継続学習単位を獲得し、専門性を強化することができます。
今回はスマホを利用した参加型のセミナーが実施されました。現地参加だけでなく、オンライン参加の先生や学生さんと一緒に、リアルタイムで実際のNELSの確認テストを行い、徐々に白熱し声が上がってくる会場の様子に、ベテランや初学者という垣根を越えた向学心の高さを感じました。
令和6年8月からは福島県立医科大学内に鍼灸院が開設されるなど、鍼灸が注目される機会も増えるかと思います。今後の鍼灸の発展のためにも、市井の先生方がさらなる成長を遂げ、鍼灸の広報活動や勉強を続けていただけることを期待しています。